なぜ九州地方の醤油は甘いのか?5つの諸説をご紹介
九州地方には独特の「甘い」醤油文化がある
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「醤油」と聞くと、しょっぱい味を想像する人が多いのではないでしょうか?九州地方の醤油は甘い味付けが一般的で、「しょっぱいのに甘い」という独特の文化があります。九州へ引っ越してきた人は醤油の甘さに驚き、九州から本州に引っ越してきた人はどの醤油もしょっぱく感じてしまい、最終的に地元の醤油メーカー製品をお取り寄せする人もいるほどです。醤油は時代の移り変わりによって味や風味を変えている、歴史性・地域性ある調味料だと言えます。今回は九州地方の醤油にスポットを当て、なぜ甘い味がするのかについて考えられる説を交えながらご紹介します。
目次
九州地方の醤油が甘い理由
地域性が色濃く出る醤油ですが、とりわけ九州地方の醤油はそのまま飲めるほど甘く味付けられているため、九州地方以外の人たちは甘さに驚きを隠せないでしょう。さらに、九州の醤油は年々甘くなっているという話題もあり、中には醤油なのにゴクゴク飲めてしまうものまで。また、九州地方の人が他の地域で醤油を味わうと、つけすぎて塩辛かったという話もあるほどです。なぜ九州地方の醤油が甘いのかには、いくつかの理由が考えられています。
1)江戸時代の貿易状況と関係がある説
現在もっとも有力とされている理由が、江戸時代の貿易状況との関係です。醤油製造の最盛期の江戸時代、鎖国により外国貿易ができた地域はごく限られていました。特に長崎県には歴史の教科書で目にしたこともある「出島」という場所があり、貿易の要所だったという歴史があります。特に砂糖は貿易品のひとつとしてだけでなく、高級品として扱われていたのだとか。江戸時代において砂糖の需要が高まったのでしょう。高級品でもあった砂糖は長崎を中心に九州地方では比較的手に入りやすかったと考えられています。また、九州地方では高級品をごちそうに使うという風習もあったとされています。輸入品として扱われていた砂糖、当時花形の輸出品とされていた醤油はいずれも高級品だったこともあり、高級品の掛け合わせとして甘い醤油が誕生したのではないかと言われています。
サトウキビが手に入りやすかったことも理由のひとつ?
他の地域と比較して、サトウキビが手に入りやすかったことも要因なのではないかと考えられています。鹿児島県をはじめ貿易相手の沖縄県(当時の琉球)は、サトウキビの産地としても知られています。かつて外国だった琉球と長崎が貿易をしており、砂糖の原料であるサトウキビも手に入りやすかったのではないでしょうか。
2)魚文化との関係がある説
九州地方の醤油が甘い理由として、魚文化とも関係があるのではないかと言われています。新鮮な魚はコリコリした歯ごたえで、新鮮な魚を食べることが九州の人に親しまれていました。海に囲まれた九州地方では新鮮な魚をいつでも食べられますが、新鮮な魚はうま味自体が足りないためそのうま味を調味料で補わなければならないという点がありました。魚自体のうま味や脂に合わせて醤油を調整した結果、「醤油+甘味」になったのではないかと考えられています。
3)焼酎文化との関係がある説
九州地方では、蒸留酒である焼酎醸造がさかんです。焼酎は糖分がありません。焼酎を飲みながら甘い物が欲しいと考えた現地の人たちが醤油に砂糖を混ぜたことで甘口醤油が誕生したという説です。本州を中心に醸造される日本酒は、糖分がありますよね。九州地方の焼酎文化と逆の発想で、日本酒を飲みながらしょっぱいものを食べるという組み合わせが好まれているのではないでしょうか?お酒文化と醤油が甘い理由が結びついていたという説が本当だとしたら、意外性が高いかもしれませんね。
4)お客さんの声説
醤油の地域性を考慮した説で、お客さんの「塩辛い」という声を受けてどんどん甘くなったのではないかというものです。九州地方で親しまれている甘い醤油は、一般的な濃い口醤油に甘みをさらに加えている傾向にあるため、一般的な濃口醤油より塩分が約3%下がるとされています。お客さんの声を受けて製造と開発を繰り返しているうちに、甘くなったのではないでしょうか。
九州の醤油は年々甘くなっている?
九州地方の醤油を販売する醤油醸造所の中には、「甘くてクレームになったことがないがしょっぱいとクレームになりやすい」という話もあるほど。お客さんの声により甘さを追加しているため、年々甘さが増しているのではないかとも言われています。
5)本州よりも気温が高い環境が要因説
九州地方は地理的に夏は本州よりも気温が高い環境下であるため、暑さをしのぐためには、塩分と糖分の両方が欠かせません。九州地方の漁師たちは、かつて醤油に砂糖を混ぜて摂取していたという話もあるほど、昔から重宝されてきました。九州地方では、全般的に甘い味付けが好まれる傾向にあります。塩分を含む醤油と砂糖の糖分を混ぜることにより、塩分と糖分が同時に摂取できることから、甘辛い味が愛されてきたのかもしれません。
九州の定番醤油は2種類
九州地方で見られる醤油の定番は2種類で、加工品の品質規格であるJAS規格(日本農林規格)に定められています。
うまくち
その名の通り、うま味成分が入っている醤油です。うま味成分は主にアミノ酸やイノシン酸などを代表するうま味成分で、他の地域では「甘口醤油」という名称で販売されています。「うまくち」醤油とうたっているにもかかわらず、甘いのが特徴的です。うま味を引き立てることからも、煮物や照り焼きなどはもちろん、おにぎりやたまごかけご飯などご飯類の味の引き立て役にもなります。
あまくち
「あまくち」は、甘さがしっかりしたタイプです。砂糖や甘草エキスなど通常の醤油では見られない原料が入っています。最近では無添加にこだわる人も一定数いることから、氷糖蜜など無添加素材を使用したあまくち醤油も登場しています。「あまくち」は、新鮮な魚との相性抜群です!
九州の醤油はいつもより多めにつけて食べるのがおすすめ
他の地域の醤油の場合、塩辛いことからお刺身などにちょっとつける位がちょうどいいですよね。しかし、九州地方の醤油は醤油ながらも甘さがあり通常の醤油と比較して味を感じづらいことから、普段より多めにつけて味わうのがおすすめです。
まとめ
濃口醤油に砂糖や甘味料など糖分を混ぜている九州地方の醤油は、九州地方に根付いた醤油文化といっても良いでしょう。甘い理由は歴史的なものから地理的・民族的なものまで様々な諸説ささやかれていますが、九州地方ならではの理由も多くありましたね。九州の醤油は全国のスーパーマーケットや通信販売でも購入できますので、気になる方は一度味わってみてはいかがでしょうか?塩辛い物が苦手な人だけでなく、自宅に居ながら旅行感を味わいたい人にもおすすめです。
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